電磁波の健康影響に関する最新の研究と各国の動向

ICNIRP指針2020年版の問題点/the issues on ICNIRP 2020

国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)が2020年に発表した指針の問題点と、利益相反について、ハーデル博士らが、論文を発表しました。

Dr. Hardel and colleagues published a paper on the issues and conflicts of interest of the International Commission on Non-Ionizing Radiation Protection (ICNIRP) guidelines published in 2020.

 

ダウンロード
Hardell2021(ICNIRP2020).pdf
PDFファイル 666.1 KB
ダウンロード
Hardell et al J Cancer Sci Clin Ther 202
PDFファイル 520.4 KB

国際指針よりもゆるい日米の基準

アメリカの裁判所は、科学的説明を無視した説明を求める

Radio frequency exposure regulations of Japan and US allow higher levels than international guidelines. An American court has ordered the Federal Communications Commission (FCC) to explain why it has ignored scientific evidence

 

国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)は、携帯電話などで使われている無線周波数電磁波の指針値を、周波数1800MHzについて900μW/㎠を上限とし、多くの国がこの指針値に従ってきました。ただし、新携帯電話電磁波の研究が進むにつれて、規制を厳しくし、ICNIRPの10分の1や、100分の1といった厳しい規制を導入・勧告する国も増えています。

The International Commission on Non-Ionizing Radiation Protection (ICNIRP) has set a limit of 900 μW/cm2 at a frequency of 1800 MHz as a guideline value for radio frequency electromagnetic waves used in mobile phones and other wireless equipment. Many countries have adopted this guideline value. However, as research on new cell phone electromagnetic waves advances, more and more countries have tightened their regulations, introducing and recommending stricter regulations such as 1/10 or 1/100 of ICNIRP's.

 

一方、日本とアメリカは同じ周波数(1800MHz)について1000μW/㎠で、ICNIRPを上回るのは日米だけです。日本の電波防護指針は、1990年に採用され、総務省は見直す予定はないといっています。

On the other hand, Japan and the United States have adopted 1000 μW/cm2 at same frequency (1800MHz) as their standard. Only Japan and the United States exceed ICNIRP. Japan’s guidelines were adopted in 1990, and the Ministry of Internal Affairs and Communications says it has no plans to review them.

 

アメリカの指針値は連邦通信委員会(FCC)が定めていますが、25年前に制定され、人体と環境に有害な影響を報告する最近の研究結果を反映していません。環境衛生トラストなど、アメリカの教育調査団体「環境衛生トラスト」と、消費者団体「CSCP」は、見直しを拒否するFCCは裁量を乱用し、法に従っていないと批判し、提訴していました。

The FCC has established guidelines for the United States, but these guidelines were established 25 years ago and do not reflect recent research findings that have reported harmful effects to humans and the environment. The American educational research organization “Environmental Health Trust” and consumer group CSCP, have accused the FCC of abusing its discretion and failing to comply with the law.

 

813日、連邦裁判所のコロンビア特別区巡回裁判所は、FCCが行政手続き法に違反していることを指摘し、無線周波数電磁波による有害性を示す科学的証拠を無視した理由を説明するよう、命じる判決を下しました。

On August 13, the U.S. District Court for the Circuit of Columbia ruled that the FCC violated the Administrative Procedure Act, ordering it to explain why it had ignored scientific evidence on harmful effects of radio frequency radiation.

 

裁判所はFCCに対して次の3点を命じています。

 

(1) 携帯電話やその他の携帯電子機器が、指針に準拠しているかどうかを判断するためのテスト手順を保ち続ける決定について、合理的な説明を提供すること。

 (2) 無線周波数電磁波の子どもへの影響、長期曝露による健康への影響、無線機器の遍在性、およびFCCが最後に指針を更新してから発生したその他の技術的発展に対処すること。

(3) 無線周波数電磁波の環境影響に対処すること。

The court ordered the FCC to:

(1) provide a reasoned explanation for its decision to retain its testing procedures for determining whether cell phones and other portable electronic devices comply with its guidelines, 

(2) address the impacts of RF radiation on children, the health implications of long-term exposure to RF radiation, the ubiquity of wireless devices, and other technological developments that have occurred since the Commission last updated its guidelines, and

(3) address the impacts of RF radiation on the evironment. To be clear, we take no position in the scientific debate regarding the health and environmental effects of RF radiation 

 

この判決はアメリカの世論にも大きな影響を与えることになるでしょう。今後、最新の研究を反映してFCCが指針値を改定することになれば、総務省の指針も影響を受ける可能性があります。

The decision will have a major impact on US public opinion. If the FCC changes its guidance values in the future to reflect the latest research, the Ministry of Internal Affairs and Communications's guidance could be affected.

 

5Gの重大なリスク

ワシントン州立大学名誉教授のマーティン・L・ポール名誉教授は、「5G:EU、米国、国際保健機関にとって重大なリスク! 電磁場 (EMF) 被曝によって起きる8つの異なるタイプの深刻な危害の有力な証拠とそれらを引き起こすメカニズム」を発表しました。電磁波によって発生する生体への影響( DNA損傷、男性と女性の不妊、神経学的影響、アポトーシス、酸化ストレス、ホルモンへの影響など)と、それらの影響を報告した科学的文献を紹介しています。

 

 

日本の電磁波過敏症の有病率

北條祥子博士らは、日本の電磁波過敏症有病率を3.0〜5.7%で、電磁波過敏症患者の80%は化学物質過敏症も併発している、と推計した論文を発表しました。電磁波過敏症患者の多くは、様々な電化製品に反応していることも示しています。

 

Development and evaluation of an electromagnetic hypersensitivity questionnaire for Japanese people

携帯電話基地局で健康被害を受けた医師の報告

マンション屋上に携帯電話基地局が設置された後、家族全員に健康被害が発生し、マンション住民にアンケート調査を行った新城先生の記事があります。詳しくはこちら

 

 

第5回パリ・アピールで電磁波について決議

2015年5月、ベルギー王立医学アカデミーで電磁波過敏症(EHS)と化学物質過敏症(MCS)をテーマにした国際会議が開かれました。EHSとMCSが健康や社会的・個人的生活に深刻な影響を与えていること、診断基準や治療法を早急に確立する必要があることが決議されました。
ダウンロード
第5回パリ・アピール.pdf
PDFファイル 171.1 KB

オーストリア医師会が電磁波による健康問題の診断ガイドラインを発表

2012年3月、オーストリア医師会は診断と治療のガイドラインを発表しました。症状と被曝状況の関連性を考慮すること、電磁場測定の重要性、患者の血液検査の項目などを具体的に示しました。

ダウンロード
translated in Japanese
AG-EMF ガイドライン訳.pdf
PDFファイル 307.0 KB
ダウンロード
Original, in English version
AG-EMF原文.pdf
PDFファイル 243.7 KB

電磁波過敏症のアンケート調査

国内の電磁波過敏症発症者を対象にアンケートを行い、スウェーデン、カロリンスカ研究所のオーレ・ヨハンソン博士との共著論文として、学術誌「Pathophysiology」で発表しました。その後、日本臨床環境医学会が発行する「臨床環境医学」で掲載され、同学会のご厚意で当会HPに掲載させていただきました。

 

Yasuko Kato and Olle Johansson

The situation of electrohypersensitivity: Symptoms, EMF sources, economic and social problems, and precautionary approach

 

In Japanese with English abstract.

ダウンロード
総説_加藤.pdf
PDFファイル 1.2 MB

イランで基地局周辺の疫学調査を実施

イランでも携帯電話基地局周辺で健康被害が確認され、住宅地の300m以内に基地局を建てないよう求める論文が発表されました。

 

Heath effects of living near mobile phone base transceiver station (BTS) antennae:

a report from Isfahan, Iran”, Electromagnetic Biology and medicine(2013)

 

ダウンロード
Shahbazi-Gahrouei2013訳2.pdf
PDFファイル 182.0 KB

電磁波問題に予防原則適用を求める欧州環境庁( EEA)の報告書

2013年1月23日、EEAは報告書「早期警告からの遅すぎる教訓(Late Lessons from early warnings )2」を発表し、携帯電話など無線通信で使われる電磁波にも予防原則を適用するよう求めました。

 

EEA Report: Late Lessons from Early Warnings

 

関連記事(related article):加藤やすこ「電磁波問題に予防原則を-欧州環境庁が警告」週刊金曜日(Yasuko Kato. "On the precautionary principle for electromagnetic waves-European Environment Agency warns)

 

ダウンロード
LL2.pdf
PDFファイル 565.7 KB

著名な研究者グループも規制の厳格化を求める

2013年1月7日、バイオイニシアティブ・ワーキング・グループが、報告書の増補改訂版を発表。2007年の勧告値(0.1μW/㎠)よりもさらに低い、0.0003〜0.0006μW/㎠という厳しい値を勧告しました。日本の総務省の電場防護指針では、2GHzに対して1000μW/㎠まで認められています。

 

The BioInitiative Working Group report on electromagnetic fields (EMF) and health effects from power lines, cell phones, and wi-fi. ... SECTION 1: SUMMARY FOR THE PUBLIC

 

ダウンロード
バイオ2012要約.pdf
PDFファイル 763.7 KB

国際がん研究機関(IARC)のプレスリリース

世界保健機関(WHO)で、さまざまな物質の発癌性を検討するIARCは、携帯電話電磁波の発がんリスクを検討し、「人間に対して発がん性の可能性がある(グループ2B)]と認めました。

 

 

IARC CLASSIFIES RADIOFREQUENCY ELECTROMAGNETIC FIELDS AS POSSIBLY CARCINOGENIC TO HUMANS

 

ダウンロード
IARC208.pdf
PDFファイル 104.7 KB

オーストラリア行政裁判所が電磁波による健康被害を認定

携帯電話やパソコンの使用を職場で強要され、電磁波過敏症や偏頭痛が悪化したという研究職の男性の訴えを認める判決が出ています。

 

Administrative Appeals Tribunal of Australia recognizes health effects due to EMFs

McDonald and Comcare [2013] AATA 105 (28 February 2013)

 

ダウンロード
AATA2013.pdf
PDFファイル 448.7 KB

欧州評議会(CoE)が電磁波削減を勧告

2011年5月、欧州評議会議員会議は、電磁波過敏症発症者のために電磁波のないエリアをつくること、学校には有線LANを設置することなどを盛り込んだ勧告案を賛成多数で採択し、加盟47か国に勧告しました。

 

Resolution 1815 (2011) Final version

The potential dangers of electromagnetic fields and their effect on the environment

 

ダウンロード
欧州評議会採択文書-3.pdf
PDFファイル 155.1 KB

アメリカ国立建築科学研究所が電磁波・化学物質対策もガイドラインを策定

アメリカ政府の建築・交通バリアコンプライアンス委員会(通称:アクセス委員会)は、電磁波過敏症と化学物質過敏症はアメリカ障害者法(ADA)の下で、障害として認められうると発表。この委員会の委託を受けて、アメリカ国立建築科学研究所(NIBS)は、電磁波過敏症や化学物質過敏症を発症した人が、安全に建物を利用できるよう、ガイドラインを策定しました。電磁波発生源や化学物質の除去にも言及しています。

 

NIBS (US) National Institute of Building Sciences formulates guidelines on EMF and chemicals

 

ダウンロード
IEQ.pdf
PDFファイル 199.0 KB